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100年企業のウェルビーイング。「謎の」通販ショップが人気を集める理由とは?4代目の息子が3代目社長の父親に聞いてみた!(前編)

100年企業のウェルビーイング。「謎の」通販ショップが人気を集める理由とは?4代目の息子が3代目社長の父親に聞いてみた!(前編)

はじめに

 

広島に「謎の」通販のショップがあることはご存知ですか?

 

◎「楽天市場で1位を連発する謎のショップ」として日本経済新聞に取材を受けたり…

 

◎マーケティング本で「開封率90%のメルマガの秘密とは?」の特集を組まれたり…

 

◎毎日20:00に販売開始される新商品たちがほんの数分で完売することがあったり…

 

そのお店の名前は、heelandotoe(ヒールアンドトゥ)、といいます。

 

顧客たちが愛情を込めて「ヒールさん」と呼ぶそのショップ。彼らが作るwebページやメルマガ、SNSは、通販でありながら”人の温もり”や”人の気配”が溢れています。

 

そんなヒールさん。

 

実は、2023年に創業100周年を迎えた老舗企業でもあります。

 

通信販売業界はご存知の通りインターネットの発展と共に成長してきた業界です。業界トップの楽天は1997年の創業。つまり通販業界が生まれてからまだ30年も経っていません。

 

ヒールさんは楽天市場に1999年から出店。24年前です。つまりヒールさんはインターネット通販の黎明期(れいめいき)から通販事業に参入してきました。

 

皆さんも24年前を想像してみてください。

 

海のものとも山のものともわからないインターネット通販。そんな「新しい事業」にヒールさんのような老舗企業がなぜ参画したのか?

 

そこにはどういった想いや経営判断があったのか?

 

創業100年の老舗企業でありながら通販業界では「謎の」という形容詞をつけて語られるヒールさん。

 

そんなヒールさんの現在の社長(3代目)に大手企業に在籍する4代目の息子がインタビューしました。

 
  • 岡田晃幸さん

    岡田晃幸さん

    heelandtoeを運営する株式会社おかだ代表取締役社長。靴の卸(おろし)を家業としていた会社の3代目として生まれる。1997年に周囲の反対を押し切って通販事業に参入。以来、得意技は「周囲の反対を押し切ること」。精進料理に没頭したり、アールユベーダを学ぶためにインドネシアに行ったり、フランスの居住許可書を取得してパリに移住したり(!)と、書いてたらなんだかこの人そのものが「謎の」感が…

  • 岡田和真さん

    岡田和真さん

    ひょんなことから「オレンジさん」を執筆することになった大手企業に在籍する25歳。つまり25歳だからヒールさんが通販事業に参入した頃に生まれたわけなので、通販業界の黎明期を内側から見ながら(感じながら)幼少期を過ごす。週に2回ジムに行って、1週間分の惣菜を休日に作り、趣味は動画編集…、と、おいおい好青年が過ぎるぞ!と突っ込みたくなる透明感のかたまり。今回は多忙を極める父親をつかまえてインタビュー敢行!

heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の社長に息子のがインタビューしている様子イメージ

 

「次は何をやるんだろう?」お客様に常にそう思ってもらえるために

和真さん

なんだか緊張します(笑)

 

仕事の話は家族であんまりしたことないので。

岡田晃幸さん

そうだね。

逆に、何を聞かれるのかと思うとこっちが緊張します。

 

自分たちの会社のことを僕が話すことはほとんど無かったので。

和真さん

笑、実の息子の僕が知らないんだから!

 

そりゃ「謎の」ショップになるよね。

Heelandtoeって「謎の」っていうふうに言われるじゃないですか。

 

そのことについて社長としてはどう思ってたりするの?

岡田晃幸さん

あんまり意識したことがない、っていうのが正直なところです。

でも本質的には「謎の」って言っていただけるのは良いことだと思っています。

 

「謎の」って思ってくださるということは、僕たちheelandtoeに興味を持ってくださっている、ていうこと。

僕たちが仕事として続けていることに興味を持ってくださっているということ。

 

相手に興味を持ってもらわなければ、何も始まらないし、何も起こらない。

 

だから悪いことではないと思います。

和真さん

意識してやっている、意識して続けている、っていうこと?

岡田晃幸さん

そうだね。

 

仕事である以上は意識してやっている部分が多いかな。

「heelandtoeは次はいったい何をやるのだろう?」ってお客様に常に思っていただけるように。

 

常に気になる存在であり続けるように意識してやっていることは多いと思います。

和真さん

僕の話をしていいかな?(笑)

岡田晃幸さん

どうぞどうぞ(笑)

 

こんな機会でもなきゃじっくり話すこともないから(笑)

和真さん

モチベーション、ってことに最近よく悩んでいて。

 

いや、、、

 

悩む、より、迷う、かな。

仕事に対するモチベーションの保ちかたに迷っていて。

新卒で今の金融関係の会社に就職して。

 

で、、、、

 

たまたま今回、このwebメディア「オレンジさん」の記事を書くことになって。

和真さん

すると、改めていろんなことに気づいたんだよね。とても優秀な人たちがとんでもないモチベーションの高さで仕事に取り組んでいる。

 

世界に何かを伝えよう、世界を少しでも変えていこう、と頑張っている。

そのモチベーションって…いったい何なんだろう?って。

で、こうして父さんにインタビューする機会がもらえたんで。

 

父さんが20年以上もモチベーションを保ち続けている方法って何なんだろう、って。

 

周りからの興味を集め続けている会社を作り続けているモチベーションって何なんだろう、って。

 

だったら直接聞いちゃえ!って(笑)

heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の100年の歴史を聞いてメモしている様子イメージ

 

heelandtoe誕生前夜。会社はマイナスの状態だった。

岡田晃幸さん

なるほど。

 

だったらheelandtoeを始めたころの話をしたほうがいいかな。

和真さん

父さんは僕と同じように、家業を継ぐことなく外の会社に就職したんだよね?

岡田晃幸さん

そう。

 

最初は会社を継ぐ気なんか無かった。

2代目に「戻ってこい」と言われてね。

 

半ば強制的に(笑)

岡田晃幸さん

この話は会社のスタッフにもあまりしたことはないけど、、、

 

僕が会社を継ぐことになった30年前は会社の経営が傾いていてね。

傾いていたどころじゃない。

 

赤字経営だったからマイナスの状態だった。

和真さん

それは本当に知らなかった。

 

息子なのに(笑)

岡田晃幸さん

だから、必死だった。

 

そもそも論で食べていけない状態だったからマイナスからのスタート。

マイナスを「0」に戻すこと。それが会社を継いだころのの自分のモチベーションだったかな。

和真さん

ほんとうに初耳。

 

周りの人たちは、、、

 

「好きなことの延長で商売をやっているんだよね」

 

って思っているんじゃないかな?

岡田晃幸さん

そうかも知れない。

 

でも、、、

 

やっている当人たちは必死の塊だった。

マイナスを「0」に戻したい。余裕を持っていろいろと考えることができる生活がしたい。

 

それがモチベーションだった。

和真さん

楽天を通して通販事業に参入したのが24年前。

 

当時はどんな状況だったの?

岡田晃幸さん

僕が会社を継いだ30年前。つまり、heelandtoeが24年前に通販事業に参入する前、会社は廉価な靴の卸しをやっていた。

 

ほら、商店街で一足1,000円以下で売っているような靴、あるじゃない?

 

ああいう靴を卸し(BtoB)として小売店さんに売っていた。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)のインタビューイメージ

岡田晃幸さん

で、会社の経営は赤字だった。

どこでも買えるものを売って商売することから方向展開をしたかった。

 

だから、、、

 

「ここでしか買えないもの」

 

「お客様がどうしても欲しくて仕方ないもの」

 

を売ることにした。

和真さん

そうだったんだ!

 

だからインポート(輸入物)の靴を取り扱い始めた?

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の商品イメージ

岡田晃幸さん

そう。

 

お客様にわざわざ足を運んでいただきたくてね。

それが25年くらい前。

 

同じ時期に、楽天さんを通して通販事業も始めた。

和真さん

25年前って、、、

 

通販で靴を売ることって一般的だったの?

 

2023年の今では当たり前だけど。

岡田晃幸さん

頭がおかしいんじゃないか?って周りからは言われたよ(笑)

 

通販で靴なんか売れるはずがない。

 

しかも数万円もするインポート(輸入物)の靴なんて。

反対意見がすごかった(笑)

 

実際に何回も何回も失敗した。

和真さん

すごいな、、、

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の岡田和真さんのイメージ

岡田晃幸さん

でも、、、

 

最初に話したように「0」を戻すことが目標だった。マイナスだったから。

今のheelandtoeみたいに、

 

「お客様がいてくださる」

 

「商品を買っていただける」

 

が、当たり前じゃなかった。

お客様はいない。

 

商品は買ってもらえない。

でも、、、

 

やるしかなかった。

 

食ってかなきゃいけなかったから。

笑、だからheealandtoeが誕生した頃は、、、

 

周りから見えるようなカッコいいものじゃなかったんだよ。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の岡田社長のイメージ

 

「マイナスを0にした」ことがあるからこそ分かる「0から」の面白さ

岡田晃幸さん

モチベーション、って言うけど、、、

 

そんなことは考えたことがなかったかなあ。

和真さん

あえて言うなら、、、

 

マイナスを「0」に戻すのがモチベーション?

岡田晃幸さん

そうだね。

 

自分自身がもともと器用なタイプじゃなかったからね。

何回も何回もチャレンジすることしか出来なかった。

 

とにかく自分の全力でやり切る。

 

で、出来るまで継続する。

 

それが当たり前だったかなあ。

和真さん

僕らはモチベーションっていうと、、、

 

例えば「1」のモチベーションを「1.3」にすることを考えちゃうんだよね。

 

プラスのものを更にプラスにするというか。

でも、、、

 

父さんにとってはモチベーションっていう単語の定義がそもそも違う。

 

マイナスを「0」に戻すのってモチベーションっていうか、、、

 

必死さ。みたいな。

和真さん

「当たり前」っていう言葉の意味も違うように感じた。

 

例えば、、、

 

「継続する」って、僕らからしたら努力しないと出来ないこと。

でも父さんにとっては、

 

「継続する」って、当たり前のこと、なんだよね。

そういう原体験があるのが強さの秘密なのかな。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)にインタビューしている様子イメージ

岡田晃幸さん

ひょっとしたらそうかもしれない。

 

「当たり前」をどの基準に置くか?というのは大切なことかもしれない。

過去の経験にとらわれないことが大切かもしれない。

 

会社の経営が傾いていたとき靴の卸し(BtoB)事業を手放したのってマイナスを「0」にすることだった。

「0」にするためには家業の靴の卸しを手放すことさえ必要だった。

 

過去の経験に囚われていたら…出来なかったことかもしれない。

和真さん

聞けば聞くほどすごい。。。

僕らはどうしても前例があることをしようとする。

 

「1」から「10」を目指そうとする。

 

誰かがやった前例をコピペして「1」を「1.3」にしようとする。

で、、、

 

さらにコピペして「1.3」を「1.5」にしようとする。

和真さん

そっちのほうが楽なんだよね。誰かがやったことがあるから。

岡田晃幸さん

そうだね。

 

でも、、、

 

こう考えることも出来る。

「0」から挑戦したほうが自分の成長を感じることが出来るんだよ。

 

「1」が「1.3」になるより、

 

「0」が「1」になるほうが伸び代がハッキリと見える。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)をつくった社長の仕事論をまとめたイメージ

岡田晃幸さん

これが、、、

 

モチベーションといえばモチベーションかな。自分の成長度合いを実感したい。

和真さん

マイナスから「0」にした原体験があるからこそ、、、

 

「0から」の大切さがわかる。「0から」の面白さがわかる。

岡田晃幸さん

そういうことかもしれない。

和真さん

サラリーマンをやっていると、さ。

 

「モチベーションを高めなきゃ!」

 

って当たり前に思っちゃうんだよね。

「人生」と「仕事」は別のことだから。

 

ほとんどの場合、仕事で働くことは安定して食べていくことが目的になっているような気がする。

和真さん

だから、、、

 

モチベーションが低くなるとしんどい。

 

「仕事におけるモチベーションを高く保つには?」っていう議論になる。

改めて父さんと話してみて思ったけど、、、

 

父さんからは「モチベーション」っていう言葉を感じることができなかったかも。

岡田晃幸さん

そう?(笑)

和真さん

モチベーションとか言っている人は…いきなりフランスの居住許可書を取ってパリに住んだりしないよ(笑)

 

父さんはずっとモチベーションが高い。

きっと父さんにとっては「仕事=人生」なんだろうね。

 

この部分が根本的に僕らと違う。

うらやましいなあ、って思う。

 

僕らもそうなりたいと思う。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の社長にインタビューする息子和真さんのイメージ

岡田晃幸さん

そうかもしれないね。

 

モチベーションなんて考えたことは正直あまりなかった。

自分の人生のことなんだから一生懸命になるのは当たり前。

 

没頭して夢中になるのは当たり前だった。

もちろん仕事で稼ぐ目的は「食べていくため」「生きていくため」に尽きるよ。

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の仕事の考え方をまとめたイメージ

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の仕事の考え方をまとめたイメージ

和真さん

人生と仕事はイコールだから。

食べていけるのは当たり前じゃない。

 

お客様がいるのは当たり前じゃない。

 

商品が売れるのは当たり前じゃない。

 

ぜんぶが繋がっているように感じた。

岡田晃幸さん

だからといって大金を稼いで会社を大きくする!っていうことは自分の性には合わない。

 

自分の人生っぽくない(笑)

楽天市場の人気店heelandotoe(ヒールアンドトゥ)の岡田社長のイメージ

和真さん

「仕事=人生」の延長線上にひょっとしたらウェルビーイングみたいなものがあるのかもね。

別々に考えちゃダメ、みたいな。

別々に考えない。一体として考える。それこそが本質。

 

だからこそ、、、

 

精神的な健全性(ウェルビーイング)を保つことが出来るのかな?と思った。

ここまでのまとめ

ウェルビーイングって…こういうことだよな。

 

岡田社長の表情を見ていると改めてそう思いました。仕事の充実が、人生の充実が、表情の表れている。

 

ネットショップ黎明期〜現在を彗星のように駆け抜けているheelandtoeさん。その裏側には「仕事」だけでなく「人生」そのものを見つめる本質的な視点があるように感じました。

 

私たちは呼吸をするとき、

 

「頑張って呼吸しよう!」

 

って思ったりしませんよね?

 

ひょっとしたら「仕事」と「人生」もそれと同じ関係なのかもしれません。

 

分けて考えるからややこしくなる。

 

当たり前に一つのものとして扱ってやる。頑張るとか頑張らないとか考えない。

 

呼吸するのと同じように。命を生きるのと同じように。「仕事=人生」を一体として考える。

 

その先にひょっとして…ウェルビーイングがあるのかもなあ、と思います。

 

「ウェルビーング=well-being=いいかんじに(well)在る(being)」みたいな感じ。

 

後編は、、、

 

heelandtoe流の「ブランドの見せ方」について!さらに突っ込んだお話を岡田社長にうかがいました!

 

<後編につづく>

OR THIS ONEディレクター N N

株式会社MEETSHOPの取締役でオアディスワンのディレクター。得意なことは言語化と図式化と整理整頓。オアディスワンでは大手企業との協業や商品開発を担当。とにかく分かりやすく話す人。歩く納得感。兵庫県在住。

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