村田製作所は京都府に本社を置く電子部品メーカーです。
皆さんがお使いのパソコンの中には約600個、スマートフォンには約1,000個の村田製作所の部品が使われています。世間一般的には「5G」の通信環境が話題になっていますが、村田製作所ではすでにその先の「6G」環境に必要な部品の開発が盛んです。
名実ともに世界トップクラスの部品メーカーである村田製作所。実はヘルスケア分野の製品開発も盛んに行なっていることをご存知ですか?
「自律神経の状態を可視化する」
そんな最新テクノロジーのヘルステック技術を使ったコラボ企画をなんと19歳の女子大学生が村田製作所に持ち込みました。
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井上栞梨さん
大阪市立大学1年生。コロナ禍の中で大学受験を経験し大学生に。「コロナが当たり前」という環境で大学生活を送っている。
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松田康平さん
株式会社村田製作所。今回の「疲労ストレス計」という技術をスポークスマンとして世の中に広めている。
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前田晴代
オアディスワンのプロデューサー。
コロナ期の大学生はストレスを感じているのか?
前田晴代
まず、なぜ疲労ストレス計を使った企画を村田製作所さんに提案してみようと思ったのですか?
井上さん
私たちはちょうどコロナのタイミングで受験生活を経験して、コロナのタイミングで入試をして大学生になりました。
大学に入学してからもオンラインの授業が当たり前で。初めて大学に対面の授業を受けたのは入学してから5ヶ月後でした。
自分たち自身だけでなく周りの人たちの目線もそうで。「コロナで大変だね」「コロナで大学生になってストレスでいっぱいだね」って当たり前のように言われてきました。
そんな中で、逆にコロナで大学生になったことを自分たちの強みにできないか?って考えたんです。
前田晴代
確かに「コロナ期に大学生になった」のは井上さん達しかいませんよね。それこそ100年に一度しか生まれない大学生と言える。
井上さん
プラスに捉えることって出来ないかなって。
そこで、いろんな経緯があって村田製作所さんが「ストレスを可視化する技術を持っている」っていうことを知って。
すごい!まずはストレスいっぱいの大学生のストレスを可視化してみよう!って思いました。
疲労ストレス計は村田製作所が発売している健康機器です。脈波と心拍を計測することで自律神経の状態を表示します。現在は業務用として販売しており医療の現場や製品開発の裏側で幅広く活用されています。
井上さん
お恥ずかしい話なんですが…
ストレスや自律神経っていう言葉は知ってはいましたがその意味を詳しく考えたことはありませんでした。
疲労ストレス計で表示される自律神経やストレスの状態を見て「あれ?自分ってストレスの意味分かってないな?」って思って。
改めてストレスや自律神経について勉強する機会になりました。
前田晴代
確かにそうですね。
ストレスや自律神経の意味もわからずに「ストレスがあるかもしれない…」「自律神経が乱れている…」って悩むのって本末転倒です。
井上さん
だから私の他の大学生もきっとそうだろうなって思って。
今回の取り組み(実証実験)では疲労ストレス計でコロナ期の大学生たちのストレスの状態を計測します。
その一方で、取り組みを通して大学生たちが「ストレス」や「自律神経」っていう言葉をどんなふうに認識しているか?知ることができるといいなと思いました。
前田晴代
とても素晴らしい取り組みですね。
実は言葉の意味もわからない「ストレス」や「自律神経」っていうものを不必要に恐れている?場合もありそうです。
ストレスと自律神経の意味を教えてもらえますか?
井上さん
これは村田製作所さんに教えてもらったことを私が理解していることなんですが、、、
ストレスとは英語で「刺激」という意味なんです。
だからストレス自体には悪い意味はそんなになくって。「いい刺激」もストレスだし「わるい刺激」もストレスなんです。
例えば、友達や両親とケンカして「ストレス溜まっているなあ…」っていうのも刺激ですし、気に入った洋服を買って「テンション上がる!」っていうのも刺激なんですよね。
自律神経は「元気の偏差値」という意味です。
平均値を50として「元気がある!」と自律神経の値は大きくなります。
元気がある!
=自律神経の値が高い
=自律神経が整っている
元気がない!
=自律神経の値が低い
=自律神経が乱れている
っていうふうに私は理解しています。
ここまでのまとめ
ストレスと自律神経の状態を可視化する村田製作所の疲労ストレス計。
井上さんは疲労ストレス計の存在を知ったことをきっかけに、大学生のストレス状態を計測するという取り組みを村田製作所に提案しました。
売上1兆円を超える世界的企業はなぜ19歳の提案を受け入れたか。
前田晴代
次は、村田製作所の松田さんにお尋ねします。
世界的な大企業である村田製作所さんがなぜ19歳の大学生の提案を受けようと思ったのですか?
松田さん
シンプルに井上さんの提案が素晴らしかったからです。
自分たちがやりたいことを提案するだけではなく、ちゃんと弊社の事業的なメリットまで考えて提案をして頂けました。
まず、認知拡大。
次に、学生という弊社がリーチしにくいターゲットのリサーチ。
2つのペインの解消をしっかりとご提案していただけました。
前田晴代
「学生だから」っていう色眼鏡で受け入れたのではない?(笑)
松田さん
印象的だったのは、提案の時点で井上さん達がすでに小規模なマーケティングリサーチを自前で済ませていたことです。
「やってみたらこんな結果でした」
っていうファクトをその場で示して頂けました。ここだけの話、社内的に稟議を通すことまで配慮していただけたようにすら感じました(笑)
このような点を考えても、井上さん達の提案の実現可能性はとても高いような印象を持ちました。
<井上さんたちの実証実験>
・疲労ストレス計をつかい「大学生のストレス状態」を調べる。次に、計測を経験した学生たちで「大学生ならではのストレス解消法」を考える。
・大阪市立大学、関西学院大学、神戸大学、同志社大学の4大学で150名の大学生に対して実施。
前田晴代
取り組みを進めるにあたって企業側として苦労したことはありますか?
松田さん
苦労したことは特にありませんね。それくらい井上さん達とのやりとりに過不足はありませんでした。これも実証実験をコーディネートしていただいたMEETSHOPのご尽力の賜物だとおもいます。
私自身が大学生の頃のことを考えても井上さん達の行動力には頭が下がります。
例えば、、、私たちのような企業に対して19歳の大学生がメールを送ること自体がどれほど緊張することか。
企業として、井上さん達の想いの実現にご協力できたことを光栄に思います。
ここまでのまとめ
井上さんたちは村田製作所の疲労ストレス計の特徴をしっかり理解したうえで今回の実証実験の提案を行いました。
◎大学生150人のストレス状態を計測
◎被験者たちと一緒に「大学生ならではのストレス解消法」を考える
「計測」を通して初めて知った ストレスへのリアルな認識。
前田晴代
井上さんと松田さんの話を聞いていると「この世の中でいちばん縁遠い」人同士の取り組みだったように思います(笑)
井上さん
はい(笑)
村田製作所さんのような企業さんとのお付き合いの仕方を私の友達は誰も知らない。最初はどう話していいかも分かりませんでした。
でも、、、
間に入ってコーディネートしてくださったMEETSHOPの方が「他の人と同じことをしていたら同じものしか見えないよ」っておっしゃって。
他の人と違うことをするからこそ誰も気づいていないニーズやペインに気付けるんだって。
前田晴代
現役大学生の井上さんだからこそ入り込める「大学生の世界」があるように思います。
そのリーチが欲しい企業さんは多そう(笑)
実際の取り組みでは苦労しましたことは?
井上さん
たくさんありすぎました(笑)
取り組みでは150名の大学生のストレス状態を計測するんですが、その前段階として”ストレス”や”自律神経”という言葉に対しての大学生の皆さんの認識がバラバラだったことに苦労しました。
ストレスを計測するのに、、、
その計測の対象となる”ストレス”や”自律神経”っていう言葉の意味を皆んなはっきりとは知らないんです。
井上さん
「ストレス測れるの?すごい!」
「自律神経!測りたい!」
ってなるんですが…え?この表示されたストレスってどういう意味?って必ずなる。
前田晴代
なるほど。
計測自体はシンプルなんだけど、計測の前後のやりとりが大変だったってこと?
井上さん
計測はほんとにあっという間なんです。アプリの表示も洗練されていて見るだけで自律神経とストレスの状態がわかる。
でも、、、
表示結果が分かりやすいだけに”ストレス”や”自律神経”っていう言葉の説明を求められるんです。これが大変でした(笑)
前田晴代
だってちょっと前まで井上さん自身もハッキリわかっていなかった(笑)
井上さん
そうなんですよ〜!
でも取り組みを通して、大学生の皆さんがストレスや自律神経に対してどういう理解でいるのか?どういう認識でいるのか?っていうのがよく分かりました。
もちろん…私自身もよくわかったのですが(笑)
前田晴代
「ストレスの計測」って考えると簡単なように思えますが、その前後にはいろんな要素があるということですね。
まず、その人のストレスや自律神経に対する理解。
次に、ストレス/自律神経の計測。
さらに、可視化された自身のストレスや自律神経の状態に対する解釈。
井上さん
はい。
大学生150人の一人ひとりの測定結果を知りたいとはじめたのですが、意外にも計測前に出てくる質問だったり、測定後に数値を見た瞬間の反応が印象的でした!
150人の測定結果についても、またぜひお話させてください!
ここまでのまとめ
疲労ストレス計は計測時のストレスと自律神経の状態をシンプルに可視化してくれます。
一方で、取り組みに参加した大学生たちの”ストレス”や”自律神経”に対する理解がバラバラだったことが分かったようです。